ブログ版/不動産業界の歩き方
「不動産業界の歩き方」管理人によるブログ版の業界解説書。不動産仲介業の現状と動向を解説します。不動産業界への就職や転職を目指す方、新人の方、必見の不動産ブログ!

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ショートストーリー 鼠達の晩餐
男は、床に落ちていた空き缶を灰皿にして、タバコを吸いながら・・(行き先だけでも事務員に伝えておけば良かった・・報告って大切だな・・たぶん、コイツも同じ後悔をしたのだろう・・)と思った。こんな事態になるとは想像もしていなかった。・・男は、鼠達の晩餐を眺めながら、その日の出来事を振り返った。

その男は大手系仲介会社の営業マンで、その日に限って予定がなく、店で書類の整理等をしていた。他の営業マンは全員が外出中で、責任者は本社で会議・・店には事務員とその男だけなので、男はリラックスしていると・・電話が鳴った。(反響か?)と思い・・

電話に出ると、相手は・・先月に退職扱いとなった同僚のA氏に、物件の査定を依頼したお客で、査定結果の連絡がないので電話したとのこと・・男は、(ラッキー!いただき!)と思った。A氏は既にいない・・ある日、チラシ投函を理由に直帰したまま翌日から出社しなくなった・・ノルマ未達で精神的に追い込まれた奴がバックレるのは珍しくもないが、退職届けも出さないのは非常識だ。

・・で、この件を上に報告すれば、順番制により他の営業マンが担当する事になる・・男は、この件は上に報告せず、自分が査定して媒介を取る事にした。そもそもA氏もこの案件を上に報告していない。同じ事を考えたのだろう。電話の相手にはA氏が入院したと嘘をつき、謝罪したうえで、あらためて詳細を聞いた。空家だが現地にカギがあるから立会い無しで査定して欲しいとのこと。

男は電話を切ると、行き先を書くホワイトボードに「チラシ投函・直帰」と書いて外に出た。・・1時間後には査定物件に到着した。周囲には家がなく、寂しい住環境だった。水道メーターBOXにあるはずのカギは・・無い・・玄関ドアのカギは・・開いていた。玄関ドアを開けると玄関に男性用の黒い革靴が一足あった。「こんにちわ~」と言ってみたが・・返答は無い・・とにかく中へ入った。

1階と2階の部屋を全て見たあと、1階の廊下の突き当りに引戸があったので(物入か?)と思い開けると、下へ続く階段があった。たぶん地下室・・下へ降りて、鉄のドアを開けて中へ入ると・・側面の上のほうにガラスブロックの明り取りがあり、その光で大量の荷物があるのはわかった。しかし、奥のほうまでは暗くて見えない。空気が悪く、臭いもあるのでハンカチを口にあてて呼吸した。

ガチャン・・と音がした。ドアが閉まったのだ。(脅かすなよ。ったく・・)と思い、ドアを開けようとすると、内側のドアノブが無い・・下に、ドアノブが落ちていた。壊れているので内側からは開かない。手で押してみたが鉄のドアは開かない・・困ったが・・携帯さえあれば安心だ。・・しかし・・地下室には電波が届いていなかった。

まさか・・絶体絶命・・。いや、まてよ・・この室内に工具か何かあればドアを壊せるかも・・と思い、部屋の奥へ行くと・・心臓が止まるほど驚いた。スーツ姿の男が横たわっていた。薄暗い中、恐る恐る近づいて顔を見た瞬間・・気が狂いそうになった。両目と口から鼠がでてきた。スーツの胸には当社の社章・・A氏だ。男は全ての謎が解けたが・・助からぬ運命も悟った。

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